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081 ささやかな望み

last update Veröffentlichungsdatum: 03.10.2026 06:58:11

 俺とミリアはフィオナよりも先に待ち合わせの地点へ到着していた。

 ここまでミリアのレベルは5しか上がっていない。

 俺が致命傷を与えているのだが、最後の一押しができず、先に魔物が息絶えてしまうからだ。

「想像以上にキツいな……」

 このままではレベル100で覚える最大級のスキルなんて何年かかるか分からない。リィナにはそのような時間がなかったというのに。

 ちょうど二人きりだ。俺はミリアと腹を割って話をするべきかもしれない。

「なぁ、ミリア……」

「ななな、何でしょうか、殿下……」

 ミリアの生い立ちは聞いた。

 彼女は没落貴族であって、皇家の好意で後宮勤めを許されたらしい。本来なら騎士学校に入れるはずもなく、人知れず人生を全うしていたことだろう。

「自分の運命を恨んでいるか?」

「運命? それって、あたしの家のことでしょうか?」

「ああいや、家だけじゃない。今まで生きてきた全てに関してだ」

 俺はとんでもない要求を投げようとしている。

 ぶっちゃけ彼女の人生は最悪を脱したところだし、これから先も上昇し続けていくことだろう。這い上がったばかりであって、そのような質問は愚問に違いな
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  • 聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています   081 ささやかな望み

     俺とミリアはフィオナよりも先に待ち合わせの地点へ到着していた。 ここまでミリアのレベルは5しか上がっていない。  俺が致命傷を与えているのだが、最後の一押しができず、先に魔物が息絶えてしまうからだ。「想像以上にキツいな……」 このままではレベル100で覚える最大級のスキルなんて何年かかるか分からない。リィナにはそのような時間がなかったというのに。 ちょうど二人きりだ。俺はミリアと腹を割って話をするべきかもしれない。「なぁ、ミリア……」「ななな、何でしょうか、殿下……」 ミリアの生い立ちは聞いた。  彼女は没落貴族であって、皇家の好意で後宮勤めを許されたらしい。本来なら騎士学校に入れるはずもなく、人知れず人生を全うしていたことだろう。「自分の運命を恨んでいるか?」「運命? それって、あたしの家のことでしょうか?」「ああいや、家だけじゃない。今まで生きてきた全てに関してだ」 俺はとんでもない要求を投げようとしている。 ぶっちゃけ彼女の人生は最悪を脱したところだし、これから先も上昇し続けていくことだろう。這い上がったばかりであって、そのような質問は愚問に違いない。「恨みとかないです。残念ながらお父様は借金を返済できずに、所領を失ってしまいましたが、あたしは今輝いていると思うのです。愚者の女神ルシアン様は適当に頑張れば良いと仰ってましたけれど、あたしはできるだけ足掻いてみたくなっています」 まあ、そうだろうな。  今は希望しか見えていないはずだ。侍女として騎士学校に入るには、普通ならば伯爵家以上が求められる最低ライン。没落貴族のミリアが選ばれるなんて、何度人生を繰り返そうがやってこない幸運なんだ。「今が楽しいか?」「どうして、そういうこと聞くのです? ひょっとして、あたしに恋しちゃったとか? いやでも、愛人ですよね? あたしは身分が備わっていませんし」 そうじゃないよ。俺が求めているものはそれじゃないんだ。 意図が伝わらないのなら、はっきりと言おう。俺が求める最低な要求について。「君の加護をくれないか?――」 俺はどこまで自分中心なんだろうな。  臆面もなく、人生を要求しているなんて。今を謳歌している若き女性に対して、輝かしい未来を奪おうとしている。 ポカンとした表情のミリア。流石に理解できなかったのかもしれない。彼女は

  • 聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています   080 愛する人に望むこと

    「単なる一目惚れですわ」 まあ、でしょうねぇ。  ルカ様は見た目と言動が一致しない人ですけど、一目見て恋に落ちる女性は多いかと思います。フィオナ殿下も例に漏れず、ルカ様を一目見て気に入られたみたい。「胸が高鳴りました。わたくしはようやくイリア様のご要望にお応えできると確信したのです。わたくしが愛に溺れる様を見ていただけると直感しました」「えっと、美の女神イリア様はそういったことをご所望なのですか?」「そうなのです。わたくしが殿方から寵愛を受ける様が見たいと常々仰っておられますの。結果的にまだ見せられておりませんけれど」 ひょっとすると私の幸運が勝っているからかもしれない。  彼女が婚約破棄に至った理由に私は関与している可能性がある。「そうでしたか……。申し訳ございません」「いえいえ、わたくしは現状を楽しんでおりますの。好きな殿方に振り向いてもらいたい。このような感情は初めてですし、とても新鮮に感じられておりますわ」 本当にできたお人ですね。  私であれば嫉妬で頭がおかしくなりそうなのに、フィオナ殿下は楽しんでおられると言います。授かった美貌からの余裕かもしれませんけれど、私には真似できそうもありません。「あの……、もしもルカ様が私の運命を背負ったとすれば、どう思われますか?」 何を聞いているのかな。  どうしてか私はずっと懐疑的に感じていた話を口走っています。「リィナ様、未来は誰にも分かりません。その未来については、わたくしもイリア様から伺っております。非常に危うい状態にあるのだと……」「知っておられましたか。ルカ様には前例があるそうです。ご存じでしたか?」 私の話には首を振られています。どうやら、セラ様に聞いた話をフィオナ殿下は知らされていないようです。「実はこの世界の現状はルカ様が作り出したそうです。彼は行き詰まった末に、世界の改変を選んだ。信じられないでしょうけど、ルカ様は元々子爵家のご長男であったと聞いています」「はい? ルカ殿下は第二王子様ですよね?」

  • 聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています   079 一目惚れ

     私とフィオナ殿下は二人して森へと入ります。 最初に水精霊の雫をかけてもらいましたので体調も完璧です。しかし、本当に殿下は美しい人でして、慈愛の心まで持ち合わせているのですから最高の姫君だと思います。 フィオナ殿下のレベルが二つ上がったところで休憩中。恐らく私の身体を気遣ってくれているのでしょう。「リィナ様は聖女であられますのに、剣を持って戦われるのですね?」 フィオナ殿下が水分補給をしつつ言いました。 ああ、それね。私だって祝福の儀を受けるまで聖女になるだなんて考えもしなかったんだもの。健康のために始めた剣術が意外と面白くて、今でも続いているというだけです。「女性らしくなくてすみません……」「ああいえ、そういう意味では! 頼りになると考えていたのですわ」 聞けば、この組分けには不安を覚えていたみたい。まあ聖女と精霊術士だけで黒山に入るのは流石に躊躇するところですよね。「しかも、本当にお強い。わたくしの見せ場がなくなってしまいますわ」「ルカ様のおかげです。レベリングに付き合ってもらいましたから。今はソロでも危険度三等級くらいなら戦えます」 ルカ様がいなければ、こうはなっていません。  本来、聖女というジョブは力に長けていませんし、私の強さは極端に上がったレベルのおかげなのですから。「ルカ殿下は本当に真っ直ぐなお方なのですね……」「ルカ様は芯をしっかりと持っておられます。私の病気を知っていたとしても、使徒としての使命を忘れない。あの方はきっと世界を救う。誰にも負けない信念をお持ちなのですから」「目的はわたくしも伺いました。ですが、信念以外にも感じますの。ファイアードラゴンに襲われたわたくしたちを逃がしてくれたのです。あの場面はわたくしたちを切り捨てても良かったと思います。仮に世界を救うことを第一としているのなら」 ルカ様はそういう人ですからね。  誰にでも手を差し伸べてしまう。彼は身の危険など考慮できない。危機にある者を見つけたのなら、救うことしか考えていないの。「ルカ様のアレはお人好しです

  • 聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています   078 ミリアと

     二手に分かれての登頂。八合目で落ち合う約束なのだが、出発点は明確に異なっている。「さてミリア、お前はその短剣で戦うのか?」 まず気になったのはミリアの武器である。かつて包丁で戦ったことのある俺だから、余計に気になってしまうのだ。 なぜなら短剣は扱いやすいけれど、致命傷を与えるのに不向き。レベル上げという縛りにおいて残念な効果しかなかった。「長剣は重いですし……」 こんなときミリアが男であればと考えてしまう。  残念ながら愚者の女神の使徒は女性であり、長剣を振り回すほどの力がない。「じゃあ、錬成してみろ。お前ならできるはずだ」「錬成ですか?」 俺はアイテムボックスから、魔将軍マステルの亡骸を取り出す。錬成素材としては最上級と言えるものだろう。「これは俺が討伐した魔将軍マステルの亡骸。腕を切り落とすから待ってろ」 長剣として錬成するのに、全てを使う必要はない。 俺はとりあえず右腕を切り落として、ミリアに手渡す。 流石に躊躇っていたけれど、王子殿下が手渡すものを拒むなんてできなかったのだろう。「レベル20であれば等価錬成を覚えているはずだ。手持ちの小剣とこの素材を使って長剣を錬成して欲しい」 実をいうとゲームにおいて俺はミリアをレベル50までしか上げていなかった。彼女が加護として授かったスキルですら俺は覚えさせていない。 未知なる部分が多かったものの、等価錬成は回復薬を大量生産するのに役立っており、突出した力はなくとも重宝するスキルであった。「分かりました。初めてですけど頑張ってみます」 小剣とマステルの右腕を並べ、ミリアはスキルを行使する。上手くいけば素材に応じた長剣ができあがることだろう。「等価錬成!」 即座に錬成陣へとアイテムが吸い込まれていく。  輝きを発したそれは次第に光を失い、錬成結果が明らかとなる。「あれ……?」 錬成陣に残ったのは真っ黒なアイテムであった。既に短剣でもない。黒く澱んだ何かである。

  • 聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています   077 四人の使徒

     準備を済ませたフィオナたちとロビーで合流。俺たちはレザルの街をあとにし、国境付近にある黒山へと馬を走らせていた。「フィオナ、馬に乗れたんだな?」「わたくしは戦うと決めてから全てに取り組みましたの。戦場にて必要なことを精一杯にこなしてきました」 俺が死んだものと考えていたフィオナは必要と思われる全てに努力してきたらしい。 正直に助かっている。もしも彼女が馬に乗れなければ、誰かが後ろに乗せる必要があり、それは俺である可能性が高かったからだ。 美女にしがみつかれることは男冥利に尽きるけれど、リィナの嫉妬をその身に浴びるのは生きた心地がしないだろうし。「あとミリア、初めまして。君は戦闘に長けていないだろうけど、有能な加護を持つ者だ。申し訳ないけれど、強くなってもらう」 異なる世界線で会っていたけれど、フィオナとも初対面となっていたのだし、恐らく矛盾を生まぬように改変されているはずだ。「ルカ殿下、初めまして。あたしはただのメイドだったのですが、女神様に加護を授かっていたみたいです。世界を救う使命があるのだとか……」 まあ困惑するだろう。  一応は貴族であるはずなのだが、ミリアは洗礼も祝福も受けていない。三女であったことも原因なのだろうな。「戸惑うだろうけど、俺は君が優秀な錬金術士になれると聞いている。期待しているぞ?」「ははは、はい殿下!?」 他にも気になる話が俺にはあった。  どうせ一時間は馬を走らせる必要がある。この機会に聞いておこうか。「それでフィオナ、フィンはどうなっている?」 祝福を受けたフィオナであれば何か知っているだろう。  皇国側最後の英雄。時空術士フィン・ニルス・クロノリアはやはり騎士学校に入学していない。「ニルス様の使徒でしょうか? しかし、イリア様は教えてくれなかったのです。なので、騎士学校にはミリアだけを連れております」 まあそうだろうな。女神たちは同じ目的を持っているというのに、協力し合っているという様子はないのだし。「ただニルス様はルカ様を狙っ

  • 聖女の身代わりとして死ぬ運命だったけど、どうしてか俺は成り上がって終末世界で無双しています   076 救世主

     翌日は入学式であった。俺は代表して挨拶することになっている。 二年前、アークライトが務めたとのことで、俺に声がかかったらしい。かといって、本年度はイステリア皇国の皇女殿下も入学されていたのだけど。「ルカ・シエラ・シルヴェスタだ。一年間、よろしく頼む。代表での挨拶とのことだが、まず最初に言っておくことがある」 騎士学校には王国と皇国の上位貴族以外に、小国の王族や上位貴族も入学している。 基本的に彼らは世界の平和を求めておらず、騎士学校を卒業したという肩書きを手に入れたいと考えている者たちだ。 だから、言っておかねばならない。俺が遊び半分で来ているわけじゃないってことを。「俺は魔国の侵攻から人類を救うために来た」 それ以外の理由はない。女神の使徒として俺はこの場にいるのだから。「よって真面目に訓練しない者には容赦ない叱責を加える。貴族院は身分差を考慮しない場所であるが、シルヴェスタ王家との関係を重んじるのなら俺が話す通りに動け」 ざわつく大講堂。入学式に不似合いな俺の挨拶は全員を戸惑わせている。「世界の滅びは近い。気の抜けた訓練は許さない。気に入らないのなら、さっさと所領へ帰れ。戦う気がないのであれば邪魔だ」 学長ですら戸惑っている。俺が王子であるから静観しかできないのだろう。「優秀だと感じた者は重用させてもらう。女神様の話では在学中に戦争は拡大する。シルヴェスタ王国内も戦地と化すだろう」 帝国が存在する現状では信じてもらえそうにない。だから、俺は女神様の話として、知りうる事実を告げていた。「戦って未来を守ろう。人類の明日が永遠に続くように……」 言って俺は壇上を去る。  魔国を滅ぼし、世界を安寧に導くだけ。それは俺が騎士学校へと入った理由の全てだった。 呆気にとられたのか、拍手はまばらである。まあ別に賛同を得ようとしたわけではない。 俺が本気であること。世界を救済に導く決意を分かってもらえたら充分だ。「これはシリウスのためでもある……」 俺が運命を奪

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